近時、様々なシェアビジネスが盛況であり、不動産賃貸借も例外ではありません。シェアハウス、シェアオフィスのみならず、店舗や教室等の曜日貸し(特定の曜日のみ賃貸)・時間帯貸し(特定の時間帯のみ賃貸)という形態も現れています。こうしたシェア賃貸借は、創業間もない借主にとっては、固定費の大幅な削減というメリットがありますし、貸主にとっても、手間や設備投資を考慮しても大幅な利回り向上というメリットがあります。
もっとも、貸主にとっては、不良テナントの退去を求めるにあたり、借地借家法の適用をいかに回避するかが問題となります。借地借家法が適用されると、更新拒絶や解約にあたり正当事由が必要となり、容易に契約終了を主張できなくなるからです。
シェアオフィス・曜日貸し・時間帯貸しが借地借家法が適用される「建物賃貸借」に該当するかどうかは、その排他性・独立性がポイントとなります。
たとえば、シェアオフィスについていえば、共用スペースである会議室・休憩室・フリーデスク等は排他性・独立性がなく、借地借家法が適用されませんが、問題となるのは、個室ブースです。個室ブースに鍵がかかり、固定電話や私物が置かれ、継続的に排他的・独占的に使用できるのであれば、借地借家法が適用されます。一方、個室ブースも、その都度空いている個室を選んで使用する形態であったり、鍵もかからず私物の保管を禁止するような形態であれば、借地借家法の適用を回避できる余地があります。
曜日貸し・時間帯貸しの場合には、当該借主が使用する曜日・時間帯以外には、他社が使用するため、そもそも排他的・独占的使用が前提とされていませんので、借地借家法の適用はないものと考えられます。契約者である借主のために、ロッカー等を貸す場合も、これは「建物」の賃貸借とはいえません。
借地借家法の適用が懸念される場合には、定期建物賃貸借契約を締結することが必要です。これにより、借主に立退料を要求されるという事態を回避することが可能です。
益々盛んになると思われるシェアビジネスですが、建物賃貸借に類するものについては、借地借家法の適用関係を意識することが、リスク回避のために重要と思われます。ご参考になれば幸いです。