「民泊」が行なわれる場合、その契約形式は、一般的には文字通り宿泊契約となり、旅館業法にいう「人を宿泊させる営業」に該当する可能性が高いと言えます。ところが、この契約形式を「定期建物賃貸借契約」にすることにより、旅館業法の規制を回避できないかが問題となります。すなわち、定期建物賃貸借制度においては、普通建物賃貸借と異なり、短期の制約がありません。従って、定期建物賃貸借は、更新がないこと等の事前説明や説明書面交付等の要件を満たす限り、たった1日の契約期間であっても有効とされます。そうすると、「民泊」を「定期建物賃貸借契約」のたてつけとすることにより、旅館業法の規制を回避できないかが問題となります。
かつて、ウィークリーマンションと称する契約形態が登場した際に、当時の厚生省から通知が出されています。
それによれば、「いわゆるウィークリーマンションをはじめとして、新しい形態の旅館業類似営業がみられるが、これらが旅館業法にいう「人を宿泊させる営業」に該当するか否かは、公衆衛生その他旅館業法の目的に照らし、総合的に判断すべきものであることはいうまでもない」とし、照会のあった施設(アパート・マンションの一室を1~2週間の短期利用者が大半を占め、客室には日常生活に必要な設備が完備しており、利用期間中における室内の清掃等の維持管理は利用者が行なう等)については、旅館業法の適用対象施設に該当すると述べています(昭和63年1月29日衛指第23号)。
その後も、厚生省は平成12年12月13日に衛指第128号を、厚生労働省は平成17年2月9日に健衛発第0209006号を出し、ウィークリーマンションについての通知が出され、貸室業ではなく旅館業と判断されるケースについての取り締まりを通知しています。
このように、「民泊」がどのような契約に該当するかは、「宿泊契約書」か「定期建物賃貸借契約書」かという契約書の名称にかかわらず、その実態から判断されることになります。上記通知からすると、1~2週間程度の利用期間で、室内に日常生活に必要な設備が完備されているようなケースでは、利用者の「生活の本拠」が同所であるとは認められず、「宿泊契約」であると認定される可能性が高くなります。
結局、いわゆる「民泊」については、定期建物賃貸借制度を利用することにより旅館業法の規制を免れることは許されず、やはり、「特例」により旅館業法が解除されるのを待つほかないと思われます。