敷地売却事業が創設された「マンション建替等円滑化法」が、平成26年12月24日に施行される予定となっています。細かい制度内容や仕組みは次回としますが、まずは、制度の概要をご紹介します。
同法の定める敷地売却事業では、耐震性の不足するマンションで特定行政庁から除却をする必要がある旨の認定を受けたマンション(要除却認定マンション)について、特別決議による敷地売却が認められるとともに、新築マンションについて容積率の緩和特例が受けられます。
従来、老朽化したマンションの建替えの促進は、文字通り「建替え」が認められているものの、現実的には、様々な困難にぶつかることが多くありました。
すなわち、現実的には、再建マンションに戻るためには仮住まいを経なければならず、その期間の賃料等の負担が重荷になります。そして、そうした重荷や煩わしさから再建マンションに戻らない区分所有者が少なからずいるのに、まずは再建建物の概要を建替え決議の内容として定めなければなりませんし、その再建建物の概要を調整の上決めるのに多大なる時間を要します。さらには、建替え決議の効力が賃借人に及ばず、直ちに賃貸借契約の終了事由(正当事由)を満たすことにはならず、賃貸借の解約交渉や裁判の遅れにより、事業全体がストップすることもあります。
しかし、敷地売却制度によれば、仮住まいを負担に感じる区分所有者は、早期に敷地売却代金を取得して、気に入ったマンションを新たに購入して移り住むことができますし、再建マンションの設計の概要に関する議論を省略し、等価交換を望む区分所有者だけが、敷地売却先であるデベロッパーと話し合いをすれば足ります。このように、建替え決議による建て替えよりも、敷地売却制度を活用することにより、スピーディーに各区分所有者がその目的を達成されることが期待されます。
さらには、敷地売却制度においては、借家人がマンション敷地売却組合から権利消滅期日までに補償金を受け取る代わりに、その借家権は権利消滅期日に消滅します。このことは、借家人の存在が円滑な建替えを阻害することが多かった実情を踏まえると、非常に重要な点です。ある意味では、耐震性不足、特別多数決、補償金支払いにより、賃貸借契約終了の正当事由が満たされるとみなしていることとなります。
敷地売却制度は、マンションの建替えの手法にオプションを加えた点で、今後どのような活用事例が生まれてくるのか、その動向に着目していきたいと思います。