テナント倒産時の保証金処理

 テナントが破産した際、保証金はどのように処理すればよいのでしょうか。

 テナントが破産すると、破産管財人が破産法53条の規定により賃貸借契約を解除します。この解除権は、中途解約禁止特約に優越しますので、解除通知が到達した時点で賃貸借契約解除の効果が生じます。
そうすると、その後、賃貸人と管財人との間で清算に関する協議が開始されます。

 賃貸人から請求する債権としては、以下のようなものが考えられます。
1.未払賃料
2.未払共益費
3.未払水道光熱費
4.原状回復工事費
5.保証金償却費
上記1~3については、破産手続開始決定前のものは破産債権に、破産手続開始決定後のものは財団債権となります。
上記4~5については、破産手続開始決定後に発生するので、財団債権となります。

 その全てが保証金の範囲内で賄えれば、それらを控除したうえで、残額を破産管財人に返還します。問題は、保証金では賄えなかった場合に、賃貸人が破産管財人に請求する方法です。

 財団債権は、破産債権に優先して随時弁済をうけますが、破産債権は配当手続の対象となり、一般的には数%程度の配当を受けるにとどまります。そのため、賃貸人としては、賃借人に対する債権の充当は、破産債権から先に保証金を充当していくことになります。最終的に残存した財団債権は、破産管財人に請求することになります。
破産財団に余裕があれば、残存した財団債権全額の弁済を受けることは可能ですが、破産財団に余裕がない場合には、財団債権の一部しか弁済を受けられない場合や、弁済を全く受けられない場合もあります。この場合には、保証金の全額没収のみで諦めるほかありません。

 明渡は、原状回復完了のうえでなされるのが一般的ですが、賃貸人側で工事範囲を決める必要がある場合等は、原状回復費用について賃借人と合意したうえで、原状回復工事未了のまま明渡完了とすることもあります。その後入居するテナントの見込みに応じて、管財人と交渉することは可能でしょう。

 残置動産については、所有権放棄の合意をするのが一般的ですが、残置動産にリース物件が含まれていることがあるので、注意が必要です。

 テナントが倒産した場合、賃貸人の損害を最小限にするためには、破産管財人との迅速な交渉と合意が必要です。場合によっては、大きく請求額を譲歩することも必要になりますが、結果として、訴訟に持ち込むよりも早期解決のほうがメリットが大きいことも多いでしょう。
倒産処理のケースの参考にしていただければ幸いです。

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