マンション建替え決議に賛成しなかった区分所有者に対しては、区分所有法63条1項に基づき、建替えに参加するか否かを催告することになります。
この催告の相手方である区分所有者が共有により複数いる場合、誰に対し、催告をすればよいでしょうか。
区分所有法35条2項によれば、集会の召集通知は、共有者の一人に対して行えば足りますが、これはあくまで集会の召集通知に限った話であり、区分所有法63条1項の催告の場合に準用を認める規定はありません。
従いまして、区分所有法63条1項の催告は、共有者全員に対してなすべきこととなります。
ところが、問題はその先にあります。共有者間で話し合いがうまくいかなかったり、相互に音信不通などの事情により、バラバラの回答をしてきた場合、管理組合としては、その回答をどのように扱えばいいのでしょうか。たとえば、3人のうち、一人は不参加を表明し、残り2人が参加を表明した場合です。
共有に関しては、民法に定めがあります。共有物の変更は、全員の同意がなければできませんが(民法251条)、共有物の管理は持分の過半数で決し(民法252条本文)、保存行為は各人がすることができます(民法252条但書)。区分所有法63条1項の催告に対する回答が、共有物の変更、管理、保存のいずれに該当するのかが問題となります。
この点、私が調べた限りでは裁判例が見当たらないのですが、建替えへの参加・不参加は、どちらにしても区分所有権の内容の変更を伴うものですので、変更行為に該当すると考えるのが適当ではないかと考えます。従いまして、回答内容には共有者全員の一致が求められ、一致が見られない場合には、回答自体が無効になるものと考えられます。
結局、上記の例に拠れば、回答内容が一致していないため、参加の回答も不参加の回答もいずれも無効となり、結局は「回答しなかった」という帰結になると思われます。
そうすると、回答しなかったことにより、参加しない旨の回答をしたものとみなされ(区分所有法63条3項)、売渡請求の対象となることになります。
裁判例も見当たらず、なかなかの難問かと思います。上記はあくまで私見ではありますが、ひとつの考え方としてご参考にしていただければ幸いです。