賃借人が賃貸人から賃料増額請求を受けた場合、賃借人は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払えば足り、もし不足分があった場合には、その不足分に年10%の利息を加算して支払わなければなりません(借地借家法32条2項)。
それでは、賃借人が、相当と認める額の建物の借賃を支払っていたところ、裁判において、その支払っていた相当額を下回る増額賃料が認定された場合、その過払金に対する利息は、何%になるのでしょうか。借地借家法32条2項の類推適用により年10%となるのかが問題となります。
東京高裁平成24年11月28日判決は、借地借家法32条2項の類推適用を否定し、その事例においては、賃貸人が民法704条の悪意の受益者に該当するとして、受領の時から年5%の利息が発生すると判示しました。
賃借人からすると、増額後の相当賃料額を少なく見積もって10%の損害を取られるよりは、多めに支払っておいて5%の利息を付けて返還を受けたほうが得と思われます。
しかし、相当賃料額を多めに見積もって支払うと、訴訟においてはその額が和解の際の基準にされてしまうこともありますし、賃借人もその額までは賃料増額を認めていたという心証を裁判官に与えてしまうこともありますので、賃借人としては、対応が難しいところと思われます。
低金利の現代において、年5%の差は非常に大きいものですが、最高裁に上告受理申立てがなされている様子で、その後の裁判所の判断も注目されます。