マンション管理費の滞納問題

 近時、不景気が長引いていることが大きな原因と思われますが、マンション管理組合や管理会社から、マンション管理費の滞納問題についての相談を多く受けます。実際、管理費・修繕積立金を3か月以上滞納している住戸がある管理組合は38.5%、6か月以上滞納している住戸がある管理組合は24.5%、1年以上滞納している住戸がある管理組合は17.7%もあります(『平成20年度マンション総合調査結果報告書』国土交通省住宅局市街地建築課マンション政策室)。
 管理費の滞納を放置すれば、マンション管理に支障を及ぼすことになりますし、他の区分所有者との公平を害し、理事者の対応への不満も引き起こします。もっとも、滞納管理費の回収には手を焼くことが多く、実効性のある回収手段が少ないという問題もあります。また、マンション管理費は5年の短期消滅時効にかかるため(最高裁平成16年4月23日判決)、早期の法的対応が望まれます。

 滞納の初期段階においては、管理組合や管理会社から滞納者に対し、督促状を送付し、場合によっては、弁護士名で内容証明を送ることもあります。滞納管理費が多額になっている場合には、分割払いの合意書を締結し、公正証書を作成し、連帯保証人を付けてもらったり、場合によっては、抵当権を設定することもあります。

 任意の支払いが期待できない場合には、法的措置を取らざるを得ません。法的手段としては、支払督促、調停、少額訴訟、通常訴訟等の手段がありますが、こうした手段を経ずに先取特権を行使し、強制執行を行うことも可能です(区分所有法7条)。もっとも、いきなり強制執行を行うことについては、抵抗感のある管理組合も多いかもしれません。

 訴訟等を提起した場合、まずは和解による解決を模索するのが適当と思われますが、滞納者が話し合いに応じてくれない場合には、判決等により債務名義を取得し、強制執行へと移行せざるを得ません。
 まずは、区分所有権および敷地権を強制競売にかけることが検討されますが、住宅ローンの抵当権が設定されていたり、固定資産税や住民税を滞納している場合も多く、管理組合に配当可能性がない場合には強制競売申立ては無剰余取り消しがなされてしまうこともあります(民事執行法63条)。
 他には、滞納者が賃貸をしている場合には、賃料差押えの方法もありますし、預金の差押え等の可能性もあります。

 法的措置を取るためには、原則として集会決議が必要となります(区分所有法26条4項、47条8項)。もっとも、これでは管理組合として迅速な対応ができませんし、密行性が必要となる仮差押えを行うにも大きな支障があります。そのため、管理組合によっては、理事会決議のみで法的措置をとれるよう、定款に定めているところもあります(マンション標準管理規約(単棟型)60条3項参照)。
また、理事者としては、同じ区分所有者同士、法的措置を取ることに抵抗感がある場合も多いですし、その都度、法的措置を取るかどうかを具体的に判断するのは精神的にもつらいところもあります。そのため、法的措置に移行するための基準や手順をあらかじめ設定し、機械的に法的措置に移行できるよう、規定を整備しておくことも重要です。

 残念ながら、調査の結果、滞納者に強制執行の対象となる資産がなく、最終的に回収に至らない場合も多くあります。その場合、管理組合としては、今後も滞納額が膨らんでいくことを放置することもできません。そこで、管理組合は、管理費の滞納が共同の利益に反する行為であるとして、区分所有法59条1項による競売請求をすることができます。具体的には、再度、区分所有法59条1項に基づく競売請求訴訟を提起し、その勝訴判決をもって競売申立てを行うことになります。

 マンション管理費の滞納問題は、非常に重要な社会問題でありながら、回収についての実効的手段が乏しく、悩みの深い問題です。管理費を払えない区分所有者には退場を求め、支払ってくれる区分所有者を迎え入れるというのが基本的な考え方かと思いますが、私としましても、管理組合の権利を守れるよう、今後も研究に努めたいと考えています。

区分所有法・マンションに関する記事一覧


Warning: Use of undefined constant date - assumed 'date' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/hironorimachida/www/wp-content/themes/Hironori-Machida/single.php on line 59
  • 区分所有法・マンション
     
    2016年03月28日

    マンション標準管理規約の改訂

    国土交通省から、平成28年3月14日付にて、マンション標準管理規約の改訂が発表されています。 →続きを見る

  • 区分所有法・マンション
     
    2015年12月28日

    読売新聞にマンションと民泊に関するコメントが掲載されました。

    2015年12月25日付読売新聞において、マンションと民泊に関する私のコメントが掲載されました。 翌日付のYOMIURI ONLINEにおける記事は...→続きを見る

  • 区分所有法・マンション
     
    2015年12月22日

    『Q&A マンション管理紛争解決の手引』出版のお知らせ

    私も執筆者の一人となっています書籍が発売されましたので、お知らせいたします。 私は「外壁、床下給排水管からの水漏れ」を執筆しました。 →続きを見る

  • 区分所有法・マンション
     
    2017年03月27日

    マンションにおける民泊

     最近、「民泊」が話題になっています。旅館業法に違反しないか等の問題もありますが、ホテル・旅館不足を背景に、社会的事実として、かなりの数の民泊が行なわ...→続きを見る

  • 区分所有法・マンション
     
    2017年03月27日

    マンション隣地の境界立会い

    マンション隣地が売却その他の理由により測量する際、マンション管理組合に対し、境界立会いが求められることがあります。 マンションの敷地は、分譲の際にき...→続きを見る

記事カテゴリー一覧

ご相談・ご質問はお気軽に