店舗経営委託契約と建物賃貸借契約

 テナントビルの一室にて飲食店や物販店が営業されるに際し、建物賃貸借契約ではなく、経営委託契約の形式がとられることがあります。たとえば、XからYに対し、スーパーマーケット内のパン売場について、同売場でのパンの製造販売の業務委託契約がなされていた場合、これが形式通り単なる業務委託契約なのか、あるいは、実質的に建物賃貸借契約なのかが問題となります。
 つまり、実質的には建物賃貸借契約であるとされると、更新拒絶するには借地借家法28条の正当事由が必要となり、容易に更新拒絶することができなくなります。委託側としては、借地借家法28条の適用を回避するために、あえて業務委託契約とするわけです。

 東京地裁平成8年7月15日判決(判例時報1596号81頁)は、受託者側であるYが、長年にわたり独自の経営判断と計算においてパンの製造販売を行ってきたこと、委託者側であるXが売場部分の提供の対価として保証金や歩合金を取得していたこと等を理由に、当該契約が建物賃貸借契約に該当すると判じました。

 一方、大阪地裁平成4年3月13日判決(判例タイムズ812号224頁)は、通常賃貸借契約に付随する権利金や敷金等の授受がないこと、委託者側の取得する金員が売上金の割合をもって定められていること、売場の設定・変更等において委託者側の強い権限が及んでいること等を理由に、建物賃貸借契約には該当しないと判じました。

 上記2つの裁判例は結論が分かれていますが、裁判所が重視しているのは、対価の性質(賃料の性質かどうか)、敷金・保証金の有無、委託者と受託者の経営権限の関係のようです。業務委託契約と建物賃貸借契約のいずれに該当するかは、委託者・受託者いずれにとっても重大な問題となります。契約書の名称に関わらず、その趣旨を予め明確にしたうえで十分に検討し、契約終了時のリスクを考えておく必要がありそうです。

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