テナントが倒産(破産、民事再生、会社更生)した場合、オーナーが賃貸借契約を直ちに解除できるとする条項が入っていることが多くあります。この倒産解除特約の適法性は、以前から争点となってきました。
民事再生の場合には、最高裁判決(平成20年12月16日判決)が、ファイナンスリースの事例ではありますが、民事再生手続開始申立てがあったときは契約を解除できるとする特約の効力を否定しています。
下級審においても、秋田地方裁判所平成14年4月4日判決は、賃貸借の事例において、双方未履行の双務契約の履行・解除選択権を定めた民事再生法49条1項の趣旨を尊重して、こうした特約の効力を否定しています。これは、事業の再生を図るという民事再生法の趣旨・目的に照らしても、判例の結論は支持されるところです。
そして、再生型である会社更生の場合にも、会社更生法61条の趣旨、事業の更生を図るという会社更生法の趣旨・目的から、同じく、倒産解除特約は違法であるとされています。
ところが、清算型である破産の場合にも、こうした考え方が妥当するのか、争いのあるところでした。
この点について、近時、東京地裁平成21年1月16日判決(金融商事判例1892号55頁)は、破産の場合にも、倒産解除条項が無効になると判示しました。
その理由は、賃借人の破産が賃貸借の終了事由とされていた旧民法621条が削除された経過、及び、破産法53条1項により破産管財人に双方未履行の双務契約の履行・解除選択権が与えられている趣旨に反するというものでした。
倒産解除特約は、こうした最高裁、下級審を含めた判例が存在するにもかかわらず、依然として、賃貸借契約その他の各種契約に挿入され続けています。今後は、こうした判例を踏まえて契約実務を見直す動きがみられる可能性もあり、注目されます。