近時、建物賃貸借の更新料特約の効力を否定する判決が、立て続けに2つ出ました。1つは、京都地裁平成21年7月23日判決(NBL911号6頁)、もう1つは、大阪高裁平成21年8月27日判決です。特に後者は、高裁レベルでの判決ということもあり、朝日新聞朝刊トップ記事になる等、注目度も高く、早くも、不動産賃貸業を営む店舗からは、更新料を払いたくないという声が多く上がっているようです。
後者の判決については、新聞記事でしか情報を入手できていないため、後日コメントさせていただくことにし、今回は、京都地裁平成21年7月23日判決(NBL911号6頁)について、私なりの見解を述べさせていただきたいと思います(但し、同判決における敷引特約については触れないこととします)。
京都地裁における事件は、更新に際し更新料として賃料の2か月分を支払うべき特約について、消費者契約法10条に反するかが争われました。契約条項が同法違反により無効となるためには、①消費者の権利を制限し又は義務を加重する条項であるかどうか、信義則に反して消費者の利益が一方的に害されるか否かが問題となります。
そして、同法の規定する要件のうち、②消費者の利益を一方的に害されることになるかについて、判決は、「消費者と事業者との間に情報の質及び量並びに交渉力の格差があることに鑑み、当事者の属性や契約条項の内容、そして、消費者がその条項を理解できるものであったか等種々の事情を総合して判断すべきである」としました(NBL同号より)。
そのうえで、判決は、「本件更新料を賃借人に負担させるには、具体的かつ明確な説明と賃借人の認識、理解が必要であるのに、本件においてはそのような具体的かつ明確な説明がなされた事実は認められないから、本件更新料特約は法10条に該当し、無効である」としました。
つまり、信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するか否かは、賃借人に対する具体的かつ明確な説明と、賃借人の認識・理解が不可欠であるということになります。逆にいえば、賃借人に対し説明を尽くせば、更新料特約が、直ちに消費者契約法10条違反になることはないとも言えます。
賃借人に対し説明すべきその具体的内容については、同紙を見る限り必ずしも明らかではありません。しかし、今後、仲介業者は、更新料特約の持つ意味について詳細に説明をする必要があり、その説明の際の留意点を、仲介業者としては整理しておく必要がありそうです。
更新料の意義については、契約期間分の賃料の一部の前払いであるという主張も見られます。しかし、この見解に立ってしまうと、更新期間の途中で契約を解約した場合、更新料の清算義務が発生してしまうのではないかという疑問も生じます。
更新料の意義については、今後、合理的・説得的な説明を求められる時代になったといえます。
最高裁判決が出るまでは様子見の方が多いと思いますが、仲介業者としては、消費者に対する十分な説明を尽くすことが、オーナーの利益を守ることにつながります。ぜひ実践をしていただきたく思います。