先日の日経新聞の朝刊に、マンション管理の全面委託が可能になる旨の記事が掲載されました。
現在、マンションの標準管理規約では、理事会を中心とした意思決定が推奨されていますが、現実問題としては、マンション住民の管理意識が乏しかったり、住民が高齢化したりで、なかなか管理がうまくいかないことが多いようです。そこで、国土交通省は、理事会による管理を原則としつつも、区分所有者の合意により外部委託も選択できるようにするとのことです。
もっとも、現在の区分所有法においても、実は、管理者という制度があります(区分所有法25条以下)。管理者を規約又は集会の決議により選任すれば(同法25条)、共有部分等の保存行為、集会決議の実行、規約で定めた行為の実行を任せることができます(同法26条1項)。管理者は、区分所有者である必要はなく、法人でも就任できることから、管理会社等を管理者に選任して、マンション管理を任せることができます。
しかし、管理者が管理行為(法18条1項)及び変更行為(法17条)を行うには、集会の決議が必要とされることから、機動的な管理ができないという欠点もあり、また、部外者である管理者に、管理行為及び変更行為を行う権限を規約等により一任することには危険も伴います。
そこで、従前どおり、理事会を置きつつ、管理者を置くことも考えられますが、裁判例では、理事長が選任されている場合には、特別の事情がない限り、理事長が管理者であるとされていることから、理事長と管理者との権限関係が問題となりえます。標準管理規約においても、理事長が区分所有法に定める管理者とするという条文が置かれています(標準管理規約38条2項)。
そのため、理事会をおきつつ、管理者にマンション管理を任せる場合には、法律や規約を整理する必要があるかもしれません。
管理組合の理事会については、理事のなり手がいない問題や、理事に対する報酬支払い等、さまざまな問題が生じており、従前、理事会が担ってきたマンション管理の権限を第三者たる管理者にゆだねることには概ね賛成ですが、理事会がなくなり、または、理事会の権限が縮小する中、いかにして、管理者の業務執行を区分所有者が監視をしていくかは重要な課題かと思われます。