今回は、マンション開発に関連して、地主さんがマンションを建てる場合の注意点について書いてみたいと思います。
地主さんが等価交換方式でマンションを建て、うち数室の区分所有権を取得する場合があります。この場合には、マンション管理規約を設定する際に、予め手を打っておく必要があります。
一般的にはマンション管理規約を設定する場合には、いわゆる標準管理規約を参考にしながら作成されることが多いと思われます。しかし、標準管理規約をベースとしてそのまま設定してしまうと、後に地主さんにとっては極めて不利な規約となり、後悔することにもなりかねません。
つまり、地主さんが区分所有権の過半数を取得するケースであれば問題は生じにくいのですが、3分の1程度の区分所有権しか取得しないケースでは、当然のことながら、管理組合の集会において、決議要件である過半数をとることができません。この場合、他の区分所有者に結託されてしまうと、区分所有権の3分の1もの多数を有していながら、集会において自らの意見が全く通らず、また、理事を一人も送り込めないという事態も生じえます。
そこで、マンション管理規約の原案を作成する際に、たとえば、理事の選任において累積投票制度を導入しておき、地主側の区分所有者が少なくとも1人は理事会に送り込めるようにしておくことが妥当と思われます。
もっとも、こうした対策を施したとしても、たとえば建替え決議(議決権及び区分所有者の5分の4以上の多数による決議)のように、頭数要件が課せられているものについては、予めの対処は難しいと思われます。前記の等価交換方式の場合、一般には、一人又は若干名の地主さんが多数の区分所有権を取得する場合が多いと思われるからです。
また、上記のような問題は、住居・店舗併存の複合用途型マンション(いわゆる下駄履きマンション)においても起こりえます。すなわち、同マンションにおいては一般に店舗部分の区分所有権の方が少ないため、管理組合の理事に、店舗部分の代表者を送り込めず、店舗部分の意見が、管理組合の運営において全く反映されないという事態が生じえます。
そこで、複合用途型マンションにおいては、住居部分と店舗部分の区分所有権の割合に応じて理事を選任するなどの定めを、管理規約に予め設定しておく必要があります。
いったんマンションが販売された後に、自己に有利なように管理規約を改正することは極めて困難です。従いまして、管理規約の原案作成段階において、予め手を打っておくことが重要であると思われます。