今日は、生産緑地の買取申出制度について、大きな手続の流れについてお話したいと思います。
生産緑地に指定はされたものの、その後の事情の変化により、生産緑地の指定を解除して欲しい場合が生じます。
たとえば、相続が発生した場合において、農業を承継する方がいなくなってしまった場合や、相続税納付のために当該農地を処分したい場合などが考えられます。しかし、生産緑地のままでは、所有権の移転は可能であるものの開発行為が規制されているため、現実には処分は極めて困難といえます。
そこで、次のような場合、土地の所有者は、市町村長に対し、生産緑地を時価で買取るよう申し出ることができます。
� 生産緑地地区に指定されてから30年を経過したとき
� 農業の主たる従事者が死亡し、又は、農業に従事することが不可能になったとき
生産緑地は、税制面において多大な恩恵が受けられる一方、緑地保全という機能に鑑み、その指定解除については、このように厳しい要件が付されています。
買取申出を受けた市町村長は、当該生産緑地の買取を希望する地方公共団体等のうちから買取の相手方を定めることができ、そうでなければ、特別の事情がない限り、当該生産緑地を時価で買い取ることとなります。
市町村長は、買取の相手方を定めた場合を除き、買取申出があった日から1か月以内に、買い取る旨又は買い取らない旨を土地の所有者に通知しなければなりません。
買取の相手方が定められた場合には、当該買取の相手方は、買取申出があった日から1か月以内に、買い取る旨の通知を土地の所有者及び市町村長に通知しなければなりません。
市町村長が当該生産緑地を買い取らない場合には、当該生産緑地において農業をすることを希望する者がこれを取得できるようあっせんすることに努めなければなりません。
市町村長のあっせんにもかかわらず、買取申出から3か月以内にあっせんがまとまらなかった場合には、生産緑地法による各種行為制限が解除されます。
買取申出の手続の概略につきましては、以上のとおりです。
土地の所有者が生産緑地の買取を申し出た場合、3か月以内には決着がつくことになっており、生産緑地指定により私権の制限を受ける土地の所有者の権利保護に配慮した制度となっています。
それでは、次回以降、買い取り申出をするための要件(主たる従事者とは?農業に従事することが不可能な場合とは?)、買取時価の算定方法等の問題点につき、お話したいと思います。