さて、今回からいよいよ本題に入りますが、まずは、「生産緑地」をテーマに書いていきたいと思います。
私が住んでいる多摩地区は、大きな農地がまだ多く残っており、その農地は、文字通り農業が行われているものもあれば、たくさんの木が整然と植えられているものもあります。こうした自然の残る街並みを散歩していると、気分が和みますが、その農地の片隅に「生産緑地」の標識が立っていることがよくあります。
生産緑地とは、市街化区域内にある農地等のうち、生産緑地法第3条第1項の規定により定められた生産緑地地区の区域内の土地又は森林をいい、都市化により失われつつある農地を計画的に保全し、市街化区域において良好な生活環境を確保するために制定されました。
三大都市圏の特定市における市街化区域内の農地については、平成4年から税制上の取り扱いが変わり、原則として固定資産税等の長期営農継続農地制度の廃止や相続税の納税猶予・免除制度の除外が行われることとなりました。
しかし、他方、市街化区域内であっても生産緑地地区内の農地のみ固定資産税の農地並み課税や相続税の納税猶予・免除制度等の優遇措置が講じられることとなりました。
このように、生産緑地指定を受けると、税制面においてかなりのメリットがありますが、一方で、同指定を受けることにより、土地利用の面においてはかなりの制約を受けることになります。
具体的な例を一つ挙げると、生産緑地においては、住宅、事務所等の建築や、そのための宅地造成はできず、市区町村長の許可の下で一定の農業関連施設の建築等を行うことができるにすぎません。
平成4年当時は、未だバブル経済の名残で固定資産税等が高かったこともあり、こうした税負担を逃れるために、平成3年の生産緑地法改正と平成4年の税制改正を契機に、生産緑地指定を受けた都市農家の方々も多かったようです。
しかし、上記の通り、生産緑地指定を受けると、マンション開発等はできなくなり、しかも、生産緑地指定を解除するためには厳しい制約があります。
そこで、いかなる場合に生産緑地指定を解除できるのかが問題となりますが、この生産緑地の買取・指定解除の問題については、次回、取り上げたいと思います。