週刊住宅に論文掲載

 「更新料問題(判決)が賃貸実務に与える影響」と題する論文が、週刊住宅平成22年1月18日号、同25日号に掲載されました。
週刊住宅HP

 この論文は、更新料特約の効力について異なる結論に至り話題となった2つの大阪高裁判決(平成21年8月27日と同年10月29日)を踏まえ、今後の賃貸実務への影響を論じたものです。
 是非お読みいただければ幸いです。

講演情報 ~テナント破綻時の法律実務~

以下の内容にて、セミナーを行います。奮ってご参加ください。

主催    日本ナレッジセンター
開催日時 2010年1月20日13:30~16:30
会場    銀座フェニックスプラザ
講義概要 テナントが破綻した時は、未払い賃料の回収、敷金・保証金の処理、明渡・原状回復の履行等、様々な法律問題が生じますし、テナントが破産・民事再生等の法的整理手続に入った場合には、こうした処理は倒産法の定めに従い厳格に行う必要が生じます。特に、近時は、サブリースや定期借家における破綻など、伝統的な賃貸借契約の破綻とは違った、特別の考慮を要する破たん処理が必要な場合も見受けられます。そこで、本セミナーにおいては、テナント破綻時の賃貸借契約をめぐる法的問題点について、最新判例も踏まえながら、オーナー及びプロパティマネジャーが、いかに円滑かつ適切に処理していくべきか、オーナー側の経済的損失をできる限り回避すべく、その具体的対応策をわかりやすく解説します。

講義項目 1 建物賃貸借契約におけるテナント破綻の概説
       2 賃料不払いへの対応策
       3 賃貸借契約の解除
       4 建物明渡をめぐる法律問題
       5 原状回復をめぐる法律問題
       6 敷金・保証金をめぐる法律問題
       7 サブリース会社の破綻

売買契約交渉の不当破棄

 不動産の購入予定者が、不動産市況の悪化を理由に売買契約中止の通告をした事例において、契約準備段階における信義則上の注意義務違反としていわゆる契約締結上の過失に該当し、不法行為責任により信頼利益の損害賠償責任を負うとした判決が、東京地裁においてなされました(平成20年11月10日、判例時報2055号79頁)。

 判例は、買主が売主に取り纏め依頼書及び買付証明書を交付したこと、その後3ヶ月間に7通の契約書案を交換して交渉を進めていたこと、売買契約上の主たる問題について話し合いがつき最終的に合意すべき契約案がほぼ固まっていたことを挙げる他、さらに、買主の要請または了承のうえ、契約成立に向けての準備行為として、埋設排水管の移設等についての同意書の取り付け、時間貸し駐車場の賃貸借契約の解除・立退き完了を行っていたこと等を挙げています。
 そのうえで、買主に信義則上の義務違反を認め、信頼利益の損害賠償を認めました。

 これに対し、買主は、サブプライムローン問題等による不動産市況の悪化は外部的事情であり、買主の一方的都合によるものではないし、売主においても、こうした外部的事情により契約締結に至らない可能性を予測することは可能であったとして、信義則上の義務違反はないと主張しました。
 しかし、裁判所は、不動産市況の悪化によるリスクは、当事者それぞれの内部事情に過ぎず、誠実に契約の成立に努める義務を免除すべき正当事由にはならないと判示しました。

 契約関係は両当事者の合意によって成立するのが原則ですから、契約締結交渉を破棄しただけで不法行為責任を負うものではありません。しかし、信義則の原則に反し、契約締結交渉を不当に破棄した場合には、損害賠償責任を負うとするのが判例です。
 今回の事例では、詳細な事実認定のうえで、契約内容がほぼ合意に達していたこと、両者の認識の下に契約締結に向けての準備行為が行われていたことを理由に、買主に、信義則上、誠実に契約の成立に努める義務があったとされました。

 また、本判例は、不動産市況の悪化は、当事者それぞれの内部事情に過ぎず、契約交渉破棄の正当事由にはならないとしています。このことは、買主にとって酷のようにも思われます。
 しかし、不動産市況が高騰して売主が交渉を取りやめて別の第三者に高値で売却した場合を考えれば、裁判所の言う当事者それぞれの内部事情という理屈には、合理性も認められると思われます。
 使用の必要性や資金繰り等のいわゆる自己都合の場合のみならず、市況の悪化のような外部的事情であっても、信義則上の義務を免除する理由にはならないと判断されたことは、実務上の参考になると思われます。

 契約締結上の過失の理論については、『債権法改正の基本方針』(民法(債権法)改正検討委員会編、株式会社商事法務)においても、交渉を不当に破棄した者の損害賠償責任、交渉当事者の情報提供義務・説明義務、交渉補助者等の行為と交渉当事者の損害賠償責任として、明文化が検討されています。
 重要なテーマですので、契約担当者は、同理論に対する十分な理解が求められるでしょう。