マンション管理規約の設定

 今回は、マンション開発に関連して、地主さんがマンションを建てる場合の注意点について書いてみたいと思います。

 地主さんが等価交換方式でマンションを建て、うち数室の区分所有権を取得する場合があります。この場合には、マンション管理規約を設定する際に、予め手を打っておく必要があります。

 一般的にはマンション管理規約を設定する場合には、いわゆる標準管理規約を参考にしながら作成されることが多いと思われます。しかし、標準管理規約をベースとしてそのまま設定してしまうと、後に地主さんにとっては極めて不利な規約となり、後悔することにもなりかねません。

 つまり、地主さんが区分所有権の過半数を取得するケースであれば問題は生じにくいのですが、3分の1程度の区分所有権しか取得しないケースでは、当然のことながら、管理組合の集会において、決議要件である過半数をとることができません。この場合、他の区分所有者に結託されてしまうと、区分所有権の3分の1もの多数を有していながら、集会において自らの意見が全く通らず、また、理事を一人も送り込めないという事態も生じえます。
 そこで、マンション管理規約の原案を作成する際に、たとえば、理事の選任において累積投票制度を導入しておき、地主側の区分所有者が少なくとも1人は理事会に送り込めるようにしておくことが妥当と思われます。

 もっとも、こうした対策を施したとしても、たとえば建替え決議(議決権及び区分所有者の5分の4以上の多数による決議)のように、頭数要件が課せられているものについては、予めの対処は難しいと思われます。前記の等価交換方式の場合、一般には、一人又は若干名の地主さんが多数の区分所有権を取得する場合が多いと思われるからです。

 また、上記のような問題は、住居・店舗併存の複合用途型マンション(いわゆる下駄履きマンション)においても起こりえます。すなわち、同マンションにおいては一般に店舗部分の区分所有権の方が少ないため、管理組合の理事に、店舗部分の代表者を送り込めず、店舗部分の意見が、管理組合の運営において全く反映されないという事態が生じえます。
 そこで、複合用途型マンションにおいては、住居部分と店舗部分の区分所有権の割合に応じて理事を選任するなどの定めを、管理規約に予め設定しておく必要があります。

 いったんマンションが販売された後に、自己に有利なように管理規約を改正することは極めて困難です。従いまして、管理規約の原案作成段階において、予め手を打っておくことが重要であると思われます。

団地の一括建替え

 本日の日経新聞朝刊に、多摩ニュータウンにおけるマンション23棟・640戸の一括建替えが計画されている旨の記事が掲載されていました。全国最大規模の建替え事業となるようです。

 通常、マンションにおいて建替えを行うためには、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成が必要となります(区分所有法62条1項)。
 しかし、団地内の複数の建物を一括して建替えることができれば、住戸数の増加や高層化、出費の抑制等のメリットも少なくありません。
 そこで、複数棟のマンションが区分所有法上の「団地」を形成する場合には、一定の要件の下で、団地内建物の一括建替え決議が可能とされています(区分所有法70条1項)。

 団地内建物の一括建替え決議を行う場合には、団地内建物全体の区分所有者及び議決権の各5分の4以上の特別多数決が必要ですが、さらに、各棟ごとに、各棟の区分所有者の3分の2以上の者であって、区分所有法38条に規定する議決権の合計の3分の2以上の議決権を有するものの賛成が必要となります(区分所有法70条1項但書)。
 要するに、団地全体において、単棟の建替えの場合と同様に5分の4以上の賛成があれば、団地全体の一括建替えの必要性が高いと判断され、各棟においては、3分の2の賛成があれば足りるとされているのです。

 今回は区分所有法の「団地」についての説明を省略しましたが、「団地」概念については、世間一般的に用いられる概念と異なり、法的概念です。世間でいう団地が、必ずしも区分所有法上の「団地」に該当するとは限りません。
 このあたりの説明については、また機会を見て行いたいと思います。

マンションの建替え

 しばらく前のブログにて、区分所有法の解説書改訂版の執筆のお手伝いをしている旨を書かせていただきましたが、ようやく出版の運びとなりました。

 私は、主に、建替え、団地等の改訂作業のお手伝いをしていましたが、街をみると、最近、マンションの建替えが非常に多いように思われます。

 マンションには中小規模なものでも数十人単位の区分所有者が居住しており、建替えに向けて計画を立て、集会決議に向けて区分所有者の意思を統一していくという作業は、なかなか大変な作業となります。
 マンションの建替えには集会の特別決議が必要ですが、その特別決議が可決された場合には、決議に反対した区分所有者は、建替え事業に参加するか、マンションから退去するかの判断をしなければなりません(建替え決議に賛成した区分所有者等には反対者に対する区分所有権の売渡請求が認められているため、反対者がマンションにその後も居住し続けることは困難です)。
 一見すると、反対者にとって酷な制度とも思われますが、一方で、老朽化等の理由により建替えに賛成するものが大多数いるにもかかわらず、若干の反対を理由に建替えができないとすれば、かえって不合理ですし、危険なマンションが存在し続けることは社会的にも好ましくありません。そこで、区分所有法は、建替えについて特別決議を要することとし、両者の調整をしています。

 近時は、マンション内において隣人とのお付き合いが希薄なことも多いですから、こうした建替えの際に利害対立が発生した場合には、法的紛争にまで発展することもあります。
 マンションの建替えの際には、こうした紛争発生の可能性まで視野に入れつつ、円滑・迅速な建替えの実現を計画していく必要がありそうです。