2012年2月3日 | 賃貸借 |
定期借家においては、期間満了の1年前から6か月前までの間に、期間満了により賃貸借契約が終了する旨を通知(契約終了通知)しなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができません(借地借家法38条4項)。
もし、この通知を失念してしまい、この通知期間や賃貸借終了日を過ぎてから、通知を出した場合、その6か月経過後に、賃借人に賃貸借契約終了を対抗できるのでしょうか。
東京地裁平成21年3月19日判決(判例時報2075号179頁)は、①定期建物賃貸借契約は、期間満了によって確定的に終了し、賃借人は本来の占有権限を失うとしたうえで、②賃借人に対し終了通知がされてから6か月後までは、明渡しが猶予されるが、このことは、契約終了通知が期間満了前になされたか、期間満了後になされたかで異なるものではない、としました。
従って、契約終了通知を失念し、期間満了してしまった場合であっても、その満了後に通知をすれば、6か月後には、賃借人に退去してもらえることになります。
ただ、そうすると問題となるのは、賃貸人が、定期借家契約の終了時期を自由にコントロールすることができるようになってしまうことです。つまり、老朽建物の将来の建て替えのために定期借家にしていたところ、景気が低迷したので、しばらく様子見をし、定期借家をそのまま放置し、それから数年たって賃貸人に都合のよい時期に、賃貸人が賃借人に契約終了通知を出せば、その6か月後には無条件で、賃借人に退去してもらえるという結論になってしまいます。
判決は、この問題については、「期間満了後、賃貸人から何らの通知ないし異議もないまま、賃借人が建物を長期にわたって使用継続しているような場合には、黙示的に新たな普通建物賃貸借契約が締結されたものと解し、あるいは法の潜脱の趣旨が明らかな場合には、一般条項を適用するなどの方法で、統一的に対応するのが相当」とし、賃貸人による悪用を防止しようとしています。
黙示的に普通建物賃貸借が成立してしまえば、正当事由がなければ、賃借人に退去してもらうことはできません。
また、一般条項により賃貸借終了を対抗できないとされた場合、定期借家契約が終了している以上、賃借人の不法占拠の状態が続くことになりますが、その後の賃貸人・賃借人の関係をどのように法的に整理するのかは、今後の課題といえましょう。
黙示の契約の成否や一般条項の適否は、個別事情により異なるため、一概には言えませんが、実務上の参考にしていただければ幸いです。
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2011年7月12日 | 賃貸借 |
震災により建物が滅失した場合、賃貸借契約は当然に終了することとなりますが(最高裁昭和42年6月22日判決)、オーナーとテナントとの間にて、そもそも、建物が「滅失」したかどうかが争われることがあります。
つまり、震災により建物が即時に滅失したとなれば、その時点で賃貸借は終了しますが、滅失していないとなると、賃貸借契約は存続し、未払い賃料が積み上がっていくことになります。最終的に、オーナーとテナントとの間において、賃貸借を清算しようとした際、オーナーは、テナントに対し、敷金と未払い賃料を相殺することにより、敷金返還を拒み、一方、テナントは、賃貸借は震災により終了したとして、全額の敷金返還を求めることになるわけです。実際、阪神淡路大震災の際には、敷金・保証金の返還を巡る訴訟が多発したそうです。
大阪高裁平成7年12月20日判決(判例時報1567号104頁)は、震災のあった1月17日に建物が損壊し、同日賃貸借が終了したことを認定し、同日以降未払賃料が発生しないことを認定しました。
さらに、賃借人による動産類の搬出がなされていなかったとしても、建物自体が危険な状態にあり、居住はもちろん、動産類の保管場所としても使用できなかったのだから、明渡義務の不履行責任や、賃料相当損害金の請求もできないとしました。
震災においては、テナントのみならず、オーナーも大きな被害者です。しかも、建物の滅失の場合には、全てのテナントから一斉に敷金返還請求を受けるわけですから、オーナーは、極めて厳しい状況におかれます。
現行法上はこのような対応がやむを得ないとしても、何らかの支援は必要に思われます。
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2011年5月14日 | 賃貸借 |
だいぶ久しぶりの更新です。
近時、東京においても、計画停電の影響により、ビル管理において、共益費支払いに関する問題や、点灯しない看板費用に関する問題が出始めているようです。また、区分所有法においても、被災マンションにおいて、区分所有者の行方不明、転居先不明、多数の相続発生等により建替え決議の通知が円滑に進まない等の問題提起もされています。これらについては、順次検討のうえ、発表する機会があればよいと思っております。
さて、法務省のHPに「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」(平成23年4月12日決定)が掲載されました。賃貸借に関する部分にも多くの頁が割かれており、今後、民法改正にあたっての課題が列挙されており、大変参考になります。
転貸借についても、多くのコメントが掲載されており、転貸人倒産時における賃貸人の優先的地位等、興味深い議論もあります。個人的には、一時、問題となった転貸人倒産時における転借人の敷金保護の問題も取り上げて欲しいと思っています(まだ読み込んでいないため、どこかに記載がるかもしれませんが)。
今後の展開も非常に楽しみです。
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